■〈新板改正・手形宝鑑〉筆得要文春秋袋[新板用文章](文政8年)
【判型】大本2巻合1冊。縦261粍。
【作者】不明。
【年代等】文政8年11月刊。[大阪]絹屋卯兵衛板。
【備考】分類「往来物」。『〈新板改正・手形宝鑑〉筆得要文春秋袋[新板用文章]』は、明暦板系統『新用文章(新板用文障)』の改題本。明暦3年刊『〈江戸〉新用文章』とは異板だが、その模刻版のいずれかを改刻したもので、内容は全て明暦板と同じである。上巻の目録は削除された一方、文政板には下巻の目録を付すが、明暦板の目録題「新板用文障」の「障」のこざと偏を削除して「章」と直したほか、各書状冒頭部の番号を削除し一冊に合本した。また、文政板は明暦板下巻末の付録記事のうち「諸道具之事」「万着類之分」「篇并冠之事」も収録するが、刊年不明本の山形県立博物館教育資料館本(刊年不明、[大阪]糸屋市兵衛板)にはこの付録記事を省く。なお、『〈江戸〉新用文章[新板用文障]』は、江戸前期から中期にかけて普及した初期用文章の典型。書名を異にする異板や異本、また改題本などが多数存在するが、本文のみの純然たる手本である明暦板系統と、頭書に絵抄・注釈を加えた寛文板系統の2種に大別される(それぞれ下巻第2状「借用申銀子之事」の末尾に「明暦二年」または「寛文二年」と記載)。明暦板系統は、上巻に「正月初て状を遣事」から「年の暮に祝を得たる時礼状之事」までの19通(大半が用件中心)、下巻に「家売券状之書様之事」以下の証文類文例4通と「諸道具字づくしの事」「着類字づくしの事」「編并冠字づくしの事」の語彙集に加えて「義経含状」(寛文板系統では削除されたり、「国尽」と置き換えられた)を収録。いずれも、本文を4行・付訓で記す。以上の例文は寛文板系統では書状数が若干減ったり配列が変更されたほか、消息例文中第7状の「かしく」、第10状の「恐惶かしく」といった書止が「謹言」「恐々」等に改められるなど、「かしく」の使用を意図的に排除した形跡も窺われる。さらに証文文例では寛文板系統では「売主誰」「請人誰」のように署名について注意を喚起するなど実用面での前進が見られる。
★原装・題簽付・美本。他に所蔵無し(国文学研究資料館DB)。